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「……おい、重いぞ馬鹿後輩。」
「……うるせえ阿呆先輩。」
「おまえ阿呆って…!?」
「阿呆だから阿呆って言ったんです。そもそもこんなおもちゃのナイフと首から出てる血みたいな小道具どうやって用意したんですか…」
「いや、これはネット通販で…」
僕は呆れながら彼女の肩に手を置き気付く。
「…!!先輩、あなた…」
一体いつからここにいたんだろう、先輩の身体は異様に冷たい…
「いや、途中でホッカイロ無くなってさ。このまま後輩が来ないんだったら独りで静かに凍死ってのも悪くないかな…なんてさ。あははは…」
彼女は淋しげに笑う。
それを見て僕は悲しくなるとともに不思議と苛立つ。
「…本当心配したんですよ。」
「え…あ…あっはっは…いやあの、まさか来てくれるなんて…その…うん、心配かけて本当にごめんなさい…でした。」
僕の真剣な顔を見て彼女は慌てて謝る。
「これからも僕はずっとあなたの側にいます、どこかに先輩が行きたい時には僕も付いていきます。
何かしたい時には僕も先輩と一緒にその何かをします。
死にたい時は先輩の隣で一緒に笑って死んであげます。」
「……。」
「僕はあなたを孤独なんかにさせません。
だから…もう、こんな心臓に悪い事はしないで下さい。」
「……。」
「嫌だって言ったって僕は一生あなたの隣に居続けるつもりなんですから…ね?」
「……うん。」
彼女はまるで僕を絞め殺すかのように強く、とても強く僕の身体を抱きしめ小さく頷く。
「ありがとう…後輩……」
微笑みながらも強く僕を抱きしめる彼女の頬には一筋の涙が流れていた。
おしまい
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