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綾坂美衣、二十九。職業建設現場作業員。
日夜、鉄骨達に愛を注ぐ毎日です。
「美衣ちゃん、いつも汚れてんねぇ」
今由新、二十九。建設会社社員。
日夜、現場にきてはダメだしをする毎日です。
「ああ!?てめぇ文句があるなら、作業服に着替えてきやがれ優男」
「ん、俺は、現場の着工状況と君達がちゃんと施工してるかみるのが仕事なの。だから、作業着なんてきないよ。いやぁ、その鉄筋重そうね」
紺色のスーツをきた今由をぎろりと睨んだ美衣は、重い鉄筋を持っている肩を移し変えると、何事もなかったかのように通り過ぎようとした。
「え、美衣ちゃん、無視?ひどいよ、そこ、大体配筋間違ってるし」
「は?どこだ?この期に及んでやり直しとかマジ勘弁……!!」
配筋間違いと言われて勢いよく振り返ると、してやったりという今由の顔が見えた。
「うんな訳ないだろ?」
……、そうだこいつはそういう奴だった。
初めて出会ったのは、二十三のとき。高校卒業して直ぐに入ったこの世界。現場はヤンキー崩れか、職人堅気の親父が相場で、現場監督は、大学出エリートコースまっしぐらの使えない兄ちゃんと相場が決まっていた。
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