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「寒っ」
作業で動いている間はいいが、休憩で止まると急に冷えてくる。
飲み物でも買いに行くかと、現場から出る。
「お嬢さん、夜中に独り歩きは危険ですよ……あ、逆か」
「今~由~、てめぇこりもせずに冷やかしにきたのか!」
後ろからかけられた声に、迷うことなく今由だと決め付けて、いやいや振り返った。
そしてぎょっとした。
「……、うわ、なんか、スーツ姿は見慣れてるけど、ロングコート着てるせいかおっさん臭いな。というより疲れてるのかお前?」
もともと綺麗にオールバックにしている髪が少しばかり乱れていて、顔も疲れているようだ。が、顔はうれしそうに笑っていた。
「開口一番がそれ?酷いなぁ。美衣ちゃんが、今日夜間作業だからって差し入れにきたのにその言い草。これでも、急ぎの仕事終わらせてきたんだよ?」
「いや……うん。なんだよ。今から珈琲買いに行くけど、今由も飲むか?今日は、クリスマスらしいし、おごるよ?」
そういうと、今由は大きくため息をついた。
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