7人が本棚に入れています
本棚に追加
「お前は結婚についてどう思う?」
ある日の昼下がり、アフタヌーンティーという名の『お~いお茶』を片手に公園のベンチに腰かけながら、俺はなんとはなしに詩織にそう尋ねた。
「…それは、新手のプロポーズ、のつもりなのかしら?」
「いや、純粋な好奇心からの質問だよ。残念ながらプロポーズをするつもりはまだない」
「…まだ?」
「…まだ」
詩織は意地悪そうにくすりと笑うと、「そうね…」と言って考えるような仕草をした。
「章人君が言う結婚というのは、結婚そのものについて? それとも結婚したあとの生活について?」
「…ああ、なるほど、そこまで考えてなかったな。どっちでも、詩織の好きな方で良い」
「そう、じゃあ……」
詩織はそう言って、俺の顔をじっと見つめ、それから視線を下へ下へと移すと、また顔に視線を戻す。
それを数回繰り返す。
まるで値踏みでもされてるかのようで、彼女の視線が少しくすぐったかった。
「結婚自体は素敵だと思うわね」
「…ほう、それはまた何で?」
「だって世界で一番好きな人と、これからの人生を共有することを誓い合うのよ? まあ政略結婚とかは別なのでしょうけれど、やっぱりそれ自体はとてもロマンチックだし、素敵だと思うわ」
確かにな。まあ所詮は口頭での誓いだし、離婚なんて制度がある以上、本当に人生を最後まで共有するかどうかは怪しいところだが、そういう無粋な事を考えなければ、確かに素敵ではあるよな。
最初のコメントを投稿しよう!