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「章人君は私の為に汗水流して頑張ってくれているのだから、私も章人君の為に精一杯美味しいものを作って上げようとするの。章人の笑う顔を思い浮かべながら、鼻歌混じりにね」
「それは有り難い話だな」
「でも不意に電話がかかってくるの。章人君から」
…な、なんだか嫌な予感がするんだが…。
「『今日は遅くなる、ご飯はいらない。食べて帰る』って」
「…うわぁ」
「私はガッカリするわ。せっかく章人君に喜んで貰おうと思ったのに…って」
「……」
「でも、章人君がそれだけ頑張ってるのだから私だけしょげてるわけにも行かないし、明日こそはと思って奮起するの」
「おお!」
「でもまた章人君から遅くなるって電話があって…。そのあとも同じような事が何回か重なって……」
「…浮気フラグ?」
「違うわよ。何を言っているのかしら。現実のあなたならともかく、私の大好きな章人君は、浮気なんて、私を裏切るような真似なんて殺されてもしないわよ」
「さいですか。信じて貰えて嬉しいよ」
「だからといって、私の寂しさがなくなるわけじゃないわ。くたくたに疲れて帰ってくる章人君は、家ではめったに笑顔を見せてくれなくなって、見せてくれたとしても私の為に無理やり作ったぎこちない笑顔で……」
(詩織の妄想力ぱねぇ……)
「ある日私は我慢出来なくなってとうとう章人君に言うの。『もう耐えられない。寂しくておかしくなってしまいそうだ』って」
「…それで章人君は?」
「あら、章人君はあなたでしょう? あなただったらこういう時、私にどんな言葉を掛けてくれるのかしら?」
「えっと、そうだな……」
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