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「皆殺しにしちまったら意味がない。主人である俺達を楽させるようN国人達にゃ頑張って貰わないとな。」
噂をすれば…とジープが村落に近づくとエンジン音につられ、N国の子供達が1人また1人と入り口を囲むように集まってきた。
それを見ると呆れた様子でK氏は呟いた。
「負け犬共め。親兄弟の敵に平気で施しを求めるとは。俺なら死んだ方がましだ。」
A国では占領政策として、市中見回りの部隊に食料の配給を行わせている。食料といっても食事になるような物は無く、菓子類が中心である。大人達に力を付けさせず、未来を担う子供達を手懐ける一石二鳥の政策だ。
ジープが村落の入り口で止まると群がる無数の子供達の1人が口を開いた。
「ぎぶみーちょこれーと」
反応するように周りの子供達も口開く。
「ぎぶみーちょこれーと」
「ぎぶみーちょこれーと」
ぎぶみーちょこれーと、ぎぶみーちょこれーと……
辿々しい外国語の呟き。K氏はこの場面に遭遇するといつも恐怖を感じていた。何が怖いといって、子供達の表情だ。痩せこけた子供達が笑いもせず、泣きもせず、ただ無表情な上目遣いで近づいてくるのは何か押し潰されそうな不安を感じる。
「相変わらず気持ちの悪いガキ共め!欲しいのならキャッチしてみろ!ほらっ!」
隣のT氏も恐怖を感じているらしく、誤魔化すように力一杯チョコを子供達にぶつける。N氏もそれに習い、子供達を顔を狙って投げつけた。
全てのチョコを配り終え子供達も蜘蛛の子を散らしたように居なくなった。気分の悪い仕事の後は、早く帰ってビールでも一杯…さぁ帰ろうとした時、1人の老婆がジープの横に立っていた。
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