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振り下ろした大剣はドスジャギィの横腹に減り込み、そのまま力ずくで振り切られドスジャギィを数メートル飛ばした。
斬撃によるダメージはほど見られなかった。
ケンは大剣を再び背負い、元気に立ち上がるドスジャギィを見て口を開いた。
「うっそ~ん…」
彼の全力を出した一撃があのようでは、勝てる見込みはなかった。
さらにドスジャギィの後ろには手下のジャギィが五匹群がっていた。
恐らく、もう攻撃もできないであろう。
しかし彼にはたった一つだけできることがあった。
【逃げる】
彼に依頼されたクエストはジャギィの討伐であり、ドスジャギィの狩猟ではない。
既に規定の匹数は討伐しているので何時でも帰還できるのである。
ケンは背を向け、ドスジャギィとは反対の方向に走り出した。
スタミナはもう尽きかけており、足が縺れながらも必死に走った。
ベースキャンプにさえ到達すれば、その辺りに漂っているモンスターの臭細胞にのみ感知できる刺激臭により自分の命が守られるのだ。
彼は懸命に走った。
道を遮るジャギィを手早く殺傷しながらも…
ベースキャンプに着き、赤いボックスに入っている発煙筒を上げてギルド側に帰還の合図を送った。
その後彼は泣いた。
己の無力差に…
ハンターという仕事の厳しさに…
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