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寝ている少年を覗きこむ二つの人影があった。一つは上下赤い服をきた青年。もう一つは頭から二本の立派な角を生やした寝ている少年よりもさらに小さい女の子。彼らこそがサンタクロースと赤鼻のトナカイである。
「サンタさんへ、パパに合わせてください、ね。無理に決まってるだろうが。馬鹿か、このガキ」
サンタクロースは靴下に入っていた手紙を読み終えると無造作に投げ捨てた。
「一ヶ月前まではゲームソフトだったじゃねえかよ。久々の食料だと思ったのによ」
「サンタ、サンタ。赤ちゃん、この子の願い事叶えられるよ」
「おい、おかしいのは、その鼻だけにしようか、トナカイ?」
サンタクロースはトナカイの赤い鼻を右の人差し指でグリグリと遠慮なく押し潰す。
「いふぁいよー(痛いよー)」
サンタクロースは一分くらいしてから鼻から指をようやく放してやった。
「生者が死者にあえるわけないだろうが。この馬鹿トナカイ」
「赤ちゃんだって、そんなこと知ってるもん。だからね」
トナカイはそう言うと少年に馬乗りになった。
「こうするの」
トナカイは少年の左胸、つまり心臓、をその角で無造作に貫いた。その瞬間、少年から感情が無くなったのを感じたサンタクロースは、少年が死者になったことを悟った。貫かれた当の本人は何事もなかったかのように寝続けている。ただ、もう二度とこの少年の目が開くことはない。
「お前何やってんだよ!」
「サンタ知らないの? 人間の左胸の心臓っていうのを壊すと死者になるんだよ。でね、死者は天国ってところに天使って人たちが連れて行くんだって。だから死者になればこの子はパパがいる天国で会えるでしょ?」
サンタクロースは呆れてしばらく、実際には数分もたっていないだろうが、何も言えなかった。トナカイは自分たちの目的さえ、ちゃんと理解していなかったのだ。
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