1人が本棚に入れています
本棚に追加
「いいか、トナカイ。俺たちはなんで、こんなガキたちの願い事なんて叶えてやってるんだ?」
「それは生気っていうのが赤ちゃんとサンタの食料だから。食料がないと赤ちゃんたちは消えちゃうんだよね?」
「そうだ。生者の感情。これが生気の源だ。だから俺たちは願いを叶えてやることで喜びの感情を増幅させ、生気を奪う。死者から生気は奪えない。感情がないからな。どうすんだよ、このガキの願いが叶っても生気をとれないんじゃタダ働きだ」
「あ……ごめんなさい」
トナカイが頭を垂れてサンタクロースに謝る。頭を垂れたせいで角がサンタクロースに刺さるがサンタクロースは気にしない。もう慣れたからだ。
「もういい、わかった。ほら、次いくぞ。まだ回るところはあるんだ。今度はヘマすんなよ」
そう言うとサンタクロースは寝ている少年に背を向け歩き出した。トナカイは少年から降りて、その穏やかな寝顔を見つめた。
「うん。でもサンタ、この子の願いは叶うんだから、この子は幸せだよね」
「ああ、そうだろうよ。はやく天使って野郎が、このガキを連れてってやるといいな。天国ってとこによ」
「……うん!」
トナカイは満面の笑みでうなずくと、サンタクロースの後を追った。サンタクロースも心なしか嬉しそうな表情であった。
最初のコメントを投稿しよう!