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「おい、コゾー、コゾーはどこいった。」
決して広くはない部屋、ひび割れた壁、所々に修理の跡がある。
その部屋の散らかった机の前で、中年の男性が大声をあげた。
暖かく、オレンジ色のような淡い温もりに包まれたレンガ作りの家。
白く積もり始めた雪が季節を知らせています。
「はいはーい。」
慌ただしく二階からコゾーが降りてきた。
階段は降りるたびにギシギシと音をたてていく。
「どうしたんだよオヤジン。今日は仕事休みだろう?」
「ああ、確かに今日は休みだ。」
オヤジンは頭をかきむしりながら答えた。
「だけどなコゾー。急に広場の噴水が壊れたらしい。この辺で修理できるのは俺だけだ。」
「けれどオヤジン、外は雪が降っているよ。寒いのは嫌だー。」
「わがまま言ってんじゃねぇ、さあいくぞ、コゾー。」
「はあ、わかったよ。
マフラーしていかなきゃ。」
コゾーは頬を膨らまし不満気に振る舞ったが、オヤジンは気にしないフリをした。
『修理家のオヤジン』
と言えばこの辺りで知らない者はいない程で、
どんな物でも、頼まれた物は正確かつ丁寧に修理してしまうオヤジンは
とても評価され、コゾーの憧れだった。
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