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冷たく乾いた風が、並木通りを揺らしてく。
すれ違う人達は皆、悴んだ手を隠している。
二人は噴水のある広場に到着した。
見ると噴水は凍っており、所々欠けている。
コゾーが産まれるずっと前からあったこの噴水。
老朽化したその姿には威厳さえ感じられる。
「結構傷んでるな。こりゃしばらくかかりそうだ。」
「わあ、水が凍ってるよ、綺麗だなあ。」
噴水の周りの水は凍っており、薄く透き通っていて、まるで宝石の絨毯のようだった。
そして、
噴水のすぐ横に少女が一人。
白い帽子を深く被り、地味な色のコートに身を包んでいます。
少女は噴水近くの微かに震えながらベンチに座っていた。
「あれっ、女の子だ、一人でなにしてるのかな。」
コゾーは日が暮れた雪の日に、少女が一人で広場にいる事に疑問を感じた。
コゾーは少女の元に小走りで駆けよった。
「こんばんは、ねえ、一人で何してるの、」
すると少女は急に話しかけられた事に驚いたのか、体をビクッと動かしたが、
すぐに落ちつきを取り戻し、質問に答えた。
「こんばんは、特に何してる訳ではないわ。」
「ごめんね、驚かせちゃったかな。」
「いいえ、平気よ。もう慣れっ子だから。」
少女は少し寂し気に答えた。
「ぼくはコゾー、よろしくね。君の名前は。」
「私はメアリー。よろしく。」
「コゾー君こそ、ここで何をしてるの。」
「コゾーでいいよメアリー、ぼくはオヤジンと噴水の修理に来たんだ、『修理家のオヤジン』だぞ、すごいでしょ。」
「ごめんなさい、オヤジンさんの事、私は知らないわ。有名人なのかしら。」
「有名人さ、オヤジンに修理できない物はないんだよ。」
コゾーは自分の事のように鼻を高くした。
「それはすごいわね、素晴らしいわ。」
「そうさ、すごいんだオヤジンは。でも寝ぼすけなのがたまにキズだね。」
「ふふっ、そう言うコゾーは平気なの?」
「ぼくは平気さ、バカにしないでよね。」
「いつも一番に起きてハムエッグとトーストを焼くんだ。」
「ハムエッグ、美味しそう。」
「もちろん美味しいよ、美味しく作るコツはね………」
この後も二人はとりとめのない話をしばらく続け、いつの間にか笑い声が夜の広場に響いていました。
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