1。

4/7
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
冷たく乾いた風が、並木通りを揺らしてく。 すれ違う人達は皆、悴んだ手を隠している。 二人は噴水のある広場に到着した。 見ると噴水は凍っており、所々欠けている。 コゾーが産まれるずっと前からあったこの噴水。 老朽化したその姿には威厳さえ感じられる。 「結構傷んでるな。こりゃしばらくかかりそうだ。」 「わあ、水が凍ってるよ、綺麗だなあ。」 噴水の周りの水は凍っており、薄く透き通っていて、まるで宝石の絨毯のようだった。 そして、 噴水のすぐ横に少女が一人。 白い帽子を深く被り、地味な色のコートに身を包んでいます。 少女は噴水近くの微かに震えながらベンチに座っていた。 「あれっ、女の子だ、一人でなにしてるのかな。」 コゾーは日が暮れた雪の日に、少女が一人で広場にいる事に疑問を感じた。 コゾーは少女の元に小走りで駆けよった。 「こんばんは、ねえ、一人で何してるの、」 すると少女は急に話しかけられた事に驚いたのか、体をビクッと動かしたが、 すぐに落ちつきを取り戻し、質問に答えた。 「こんばんは、特に何してる訳ではないわ。」 「ごめんね、驚かせちゃったかな。」 「いいえ、平気よ。もう慣れっ子だから。」 少女は少し寂し気に答えた。 「ぼくはコゾー、よろしくね。君の名前は。」 「私はメアリー。よろしく。」 「コゾー君こそ、ここで何をしてるの。」 「コゾーでいいよメアリー、ぼくはオヤジンと噴水の修理に来たんだ、『修理家のオヤジン』だぞ、すごいでしょ。」 「ごめんなさい、オヤジンさんの事、私は知らないわ。有名人なのかしら。」 「有名人さ、オヤジンに修理できない物はないんだよ。」 コゾーは自分の事のように鼻を高くした。 「それはすごいわね、素晴らしいわ。」 「そうさ、すごいんだオヤジンは。でも寝ぼすけなのがたまにキズだね。」 「ふふっ、そう言うコゾーは平気なの?」 「ぼくは平気さ、バカにしないでよね。」 「いつも一番に起きてハムエッグとトーストを焼くんだ。」 「ハムエッグ、美味しそう。」 「もちろん美味しいよ、美味しく作るコツはね………」 この後も二人はとりとめのない話をしばらく続け、いつの間にか笑い声が夜の広場に響いていました。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!