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「なんで俺、こんな事してんだろ」
俺、天瀬恵(アマセ ケイ)はつい、一言だけぼやいてしまった。
文句は言うまいと決めていたのだが、やはり状況を振り返ると不満の一つや二つは許されるに違いない。
「頼まれちゃったんだから仕方ないでしょ。ほら、頑張って」
隣で美少女クラスメートの霜月結音(シモツキ ユイネ)がレースのリボンで結ばれた、長いツインテールを片方ふぁさと撫でた。
ちなみに今、俺の現在位置は某学校内で時間は夜の八時。
別に肝試しとかじゃない。そうだったらまだマシな方だろう。
何て言うか、えーっとつまり、警備だよ、警備。
俺は十七才、つまり警備中の私立聖アリウス学園の二年生なわけだ。
キリスト教の学校みたいな名前だが、別にそんな事はなく結構豪華な私立である。
「ねぇ、あそこ誰かいない?」
意識をどこかに飛ばしていると麗しきツインテール、霜月が声を潜めて俺を小突く。
身を寄せると、女の子特有の全身がふわっと浮くような香りが爽やかに漂っている。
煩悩は捨てろ、そう心にインプットすると霜月が示す方向を確認した。
確かに怪しく見えてしまう、つーか普通に怪しい。
暗い所にいるため姿はよくは見えないが、髪が長く女だと判断出来る。
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