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「ほーらー、起きなさいってばぁ……」
「んむむぅ……」
俺の布団を引き剥がそうとする霜月。
これは一悶着あった昨日を越えた朝の一風景である。
部屋の角に配置されたベッドに眠る俺は霜月により安眠を許されない。
鍵を開けっ放しにして熟睡した所、霜月は部屋の中に侵入して来やがった。
「わかった……わかったから放せ!」
引っ張り合う掛け布団からビリッと裂ける前兆音がしたのに気付いた俺は慌ててそう言った。
朝と夜は冷える気候である地域にあるこの寮は夏でも昼と夕方はとんでもなく暑いがそれ以外の時間帯は涼しい。
加えて冬になってから隙間風に苦しむよりも今すぐ起きる方がリスクは少ない。
起こしてくれるのはありがたいが、もっと穏便に……。
寝癖がついた髪をわしゃわしゃ撫でながら起床すると、ベッドの枕元の携帯を開いて時間を確認する。
……いつも通りの時間か……。
霜月からのメール一通、電話二回。
「悪りぃな、面倒かけさせて。なんか俺、お前がいないと堕落しそうだ」
まだしぱしぱする目とぼんやりする頭を擁して、俺はまず霜月に軽く謝る。
「……べ、別に起こしてあげるぐらいはずっとやってあげたっていいけど」
よくわからないが顔を赤くして、そんな事をのたまう。
有り難いけど、照れる場所がよくわからん奴だ。
まだ脳が上手く機能しないな……。
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