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作戦決行の夜はあっという間に訪れた。
「行くぞ」
風下の指揮の元で全員は素早く動き出す。
こういう団結力は脱帽だ。
男子と女子の風呂の間には当然のごとく壁がある。
外の露天風呂に出ても木で作られた高い柵が立ち塞がる。
木と木の間に隙間を作らずに組み上げられた柵はよじ登れる要素もなければ普通にやったら覗けもしない。
そこで真面目に知恵を絞った男子達。
集まった情報によると大抵の女子は風呂に入ると露天風呂にも足を運ぶらしい。
どこで仕入れた情報かは知らないが、風下の情報に間違いはない。
とりあえず男子で立てた作戦は、隙間がないなら作ればいいじゃない的な思考に基づいたものである。
単純に木と木の隙間を削って広げるだけ。
そこまでやるかと思いつつ、俺は黙っていた。
俺にも考える時間が必要だったのだ。
「さぁ、露天風呂に浸かって時を待とう」
男子十数人が広い露天風呂に身を浸ける。
俺は石造りの縁にこてんと後ろに傾けた頭を預ける。
……星が綺麗だ。
自然な星空を眺めているだけで、気持ちの上では満たされた。
こうやってバカやるのは嫌いじゃない。
それに本音を言えば俺だって見たい。
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