色の無い世界

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「それでね、オレのラドンって名前には、“勇気”と“希望”って意味があるんだ。ネオンって名前にはどんな意味があるの?」 なかなかまともな質問であり、結構ユニークな感性な持ち主なのだと思う。 俺は、自分の名前は自分で付けた、とは言わず、ただ聞かれたことだけに答えた。 「“ネオ”は異国の言葉で“色”を意味し、“オン”は光。 また、“光の色は無”ということわざがある。 意味は 『いつも見ている光景に色がついているが、それを映し出している光の色に気付くことはない』 つまり当たり前な事に気付いて感謝する人間になるよう願う。 大体こんな由来で付けられた名前だ」 光は見ることが出来るが色を失ったこの世界でネオンと名乗ることは、多少の皮肉が込められている。 言い終わったあとには珍しく歓声ではなくて、感動の声を洩らしている人が増えた。 ラドンはキラキラと憧れの目を向けてから、満足そうに笑って席についた。 俺に言わせれば、ラドンの勇気と希望って意味だって十分かっこ良くて素敵な名前だと思えた。 その質問が最後になった。 名前の由来と言う問いより良い質問を思い付く人がいなかったからだろうか。 それはホームルームの授業いっぱいに使って行われたからすぐに次の授業の準備をしなければならなかったが。 「じゃ、君はあの空いてる席に座ってね」 シルバーが指差す先には、窓際の前から2番目の場所の席。 隣に座る女の子は、1番初めに“彼女がいるか”聞いてきたあの娘だった。 セミロングの髪を1本にまとめるポニーテールが良く似合う綺麗な顔でニコニコしてこちらを見ていた。 ちょっと照れながらも、いつものように外にそれを出さないように心がけながら席まで歩いた。 「よろしくね」 「ああ」 常に笑顔を絶やさない彼女はとても好印象。 「アタシ、リンって名前なの。えっと、名前の由来は、ごめん、わかんない」 ちょっと恥ずかしがりながら笑う彼女だったが、そんな事を聞かなくても『リン』って名前は良いと思う。 「よろしくリン」 そしたら急にびっくりしたような表情になり、しばらく視線を反らしたリン。 何のことかわからない俺は、尋ねる代わりにちょっと首を傾げて目で問いかけてみた。 「ううん、なんでもない。ちょっと昔の友人に顔が似てて」
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