色の無い世界

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またしてもぶっきらぼうに答えたが、これが俺の素な性格。 特に気にする必要もないし、そのうちみんなも慣れてくるだろう。 その後現代文の授業が始まり、俺は初めて学校での勉強を教わる事になった。 隣の席に座るリンが学級委員らしく号令をかける。 教室を見渡すと、ラドンと目が合う。 彼が大きく手を振るから、先生に怒られたりして少し笑った。 これが普通の学校生活なのだと実感し、やっと楽しさという感情を見い出せたような気がした。     4時間目の数学が終了し、俺は昼食の準備をするためカバンから自作のお弁当を取り出す。 慣れない学校の環境、何よりこんなにたくさんの人と同じ部屋に長時間いることが初めてで、どうしても意識してしまう。 だけど周りの生徒はウランの言葉の通り、俺に対してとても親切に接してくれる。 お昼休みになれば、教室は一気に騒がしくなる。 記憶を失っても料理は得意な方で、材料は近くの商店街を歩けばすぐに手に入るものばっかりで苦労はしない。 今日のお弁当メニューは、卵焼きにハンバーグに、それからスパゲッティ。 おそらく記憶喪失以前もそうだったのだろう、料理が得意なのや、多少の学力が残っていること、さらには嫌いな食べ物が存在するのは、頭ではなく体が覚えてしまっているのか。 だがしかし、いざお弁当を机の上に置いて食べようと思った時その異変に気付く。 膝の上に女の子が座ってたんだ。 「わーっ!ネオンお料理じょうず!」 良く見ればそれは 『この中で彼女にするなら誰がいい?』 なんて無邪気な質問をしてきた小さな女の子だった。 「……なにしてんだよ」 あくまで物静かにそう言ってはみたが、実際結構動揺しているのが本音だった。 出会ったばかりの女の子がいきなり自分の膝に座り込んでいて、何事もなかったかのように話を進めてくれば誰だって驚く。 そもそも同年代の女の子がこんな近くにいることすらも初めてだ。 一瞬心臓がドクンと高鳴ったのもそれが理由である。
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