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しかし、どかそうと両手を彼女に当てて持ち上げようとした時に、妙な違和感が。
その時、もしかしたら俺は初めて恐怖と言う感情を味わったのかもしれない。
「お前、足」
ヒヤッとしたものが背筋を伝う。
「えへへ、気が付いちゃった?でもあんまり驚かないんだね」
目の前で自分の膝に座る女の子は、本来あるはずの場所にそれがなくなっている。
それを見て驚く俺を見ていたずらっぽくニヤニヤ笑っていた。
両手がすっぽり隠れてしまうほど大きなフード付きの白いケープを纏っていて頭にそのフードを被っている。
ここまでは良しとしよう。
しかし両手と上半身はしっかりあるにもかかわらず、下半身の一部分から下は半透明になっていて、足に至っては存在すらしていなかった。
オバケとかゴーストと呼ばれる霊の話を、病院にいた頃に本で読んだ気がするが、これがそうなのだろうか。
膝に座っているはずの彼女には重みを感じなかった。
良く見ると微かに浮遊しているため、フワフワと揺れている。
だが、質量はあるみたいで、肉眼で確認出来る上に素手でも触ることが出来る。
「その子はテルル。アタシの友達だよ。まあ、幽霊だけどね」
そんな簡単に言えるような事なのか気になったけれど、もしかしたら下界では、死んだ人が当たり前のように歩いて、いや足はないけど、動き回っているのか?
いやそんなバカな。
「……よくあることなのか?」
「何が?」
「幽霊」
「まっさかあ!この学校にはテルルしか幽霊じゃないもん!!」
テルルは可愛らしく飛び跳ねながら、幽霊なのにも関わらずニコニコしながらそう言った。
この学校にはってことは、やはり他の場所にも幽霊はいるってことなのだろう。
こんな事情を抱えていると言うのに、こんなに明るく生活をしていけるなんて俺は憧れすら感じられる。
同時に自分の悩んでいる事なんてこの学園からしてみれば、そんなに大したことではないかもしれないと思う。
「ネオン、お弁当一緒に食べよーよ」
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