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そんな平穏なことを考えていたら、目の前のテルルがかなり近くで大きな声を出した。
「ああ」
「あ、テルルずるい。アタシも一緒に食べる」
リンが子供みたいそう言って、俺の机と彼女の机をくっ付けて来る。
「あらあら?リンは妬きもちでもしちゃったのかなあ?」
テルルも負けじと自分の机を合体させて、ケラケラ笑ってリンを挑発していた。
「なっ!違うもん!別になんとも思ってないもん!」
「あはは、ツンデレだぁ」
「ち、違うよっ!」
しかし、俺を挟んでそんな大声で騒がないでもらいたいと思いはしたが、こんな状況でも少し楽しいと感じる自分もいた。
しばらく言い合いをしている2人だったが、それを仲裁する者が俺の正面の席に座り込んだ。
「まあまあ、2人とも黙ってれば可愛いんだから大人しくすれば?」
「ラドンに言われたくないよ、この男女が!」
目の前に座ったのがラドンだったために快く迎え入れたが、テルルの毒舌をモロに食らって少しへこんでた。
ラドンのお弁当がお菓子類とプリンとケーキだったのは、おそらく彼がかなり甘党だから。
また、ちょっと気になったのは黒いレザーのグローブをはめている事。
指先は扱い易いようにか出ているタイプの物だから、バイクとかギターでもやってるのではないか。
「気を落とすなラドン」
「ホントにそう思ってるならもうちょっと慰めるように言って!黙々とご飯食べながら言わないで!」
コイツいじるの面白いかも、なんて考えて、俺は黙りを決め込んで昼食を進めることにしてみた。
早くも話が出来る友人と呼べる存在に恵まれた俺は、ふと彼女らを見回してみることにした。
リンはきちんと学校指定の制服を着込んでいて、身だしなみも清潔感溢れる女の子。
一方テルルは、幽霊だからか仕方ないが制服ではなくフード付きのケープだから、これは私服の部類に入るのだろう。
ラドンは、制服の下に白いパーカーを着ていて、少し不良染みた服装とは裏腹に幼い顔つきがそれを相殺していた。
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