色の無い世界

20/66
前へ
/1382ページ
次へ
世間話にもほとんど付いていけるレベルではないが、黙って3人の会話を聞いているだけで楽しかった。 「そういえば、ネオンは凄いキレイな目をしてるよねぇ」 食事が終わって、まだ机をくっ付けた状態でそう言って来たのはテルルだった。 まあ事情を知らないのだから仕方ないが、俺は自分の目の色を見たことがない。 だが、聞いたことはあったから適当に話を合わせることに。 「あんまり言われないなそんなこと」 「いやいや、とってもキレイだよ。テルルうらやましい」 「テルルも綺麗だけど…」 色は白黒灰色しか見えていないが、俺は精一杯笑みを作ってそう言ってみたが、笑みにほとんど作為がいらなかった。 例え色がわからなくても、本当にテルルの瞳がキレイに見えたから。 「えへへ、そんなあ、照れちゃうねぇ」 テルルはすごく嬉しそうに笑うと、照れ隠しなのかケープの裾を握ってもじもじといじりはじめた。 「テルルばっかずるいっ」 「いいなーネオンはモテモテで」 ラドンが正面から頬杖をつきながら、女の子みたいな笑顔で言いながらため息をついた。 モテモテなんて言われたのは初めてだったから、少し恥ずかしかったけれども、それを外に出すことはしなかった。 こんな会話…病院じゃあり得なかった…。 なんだろう、この感覚…少し懐かしいような、そんな気分…。 もしかしたら記憶を失う以前の感情が、今こうして空っぽの自分に注ぎ込まれているのかもしれない。  
/1382ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15671人が本棚に入れています
本棚に追加