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世間話にもほとんど付いていけるレベルではないが、黙って3人の会話を聞いているだけで楽しかった。
「そういえば、ネオンは凄いキレイな目をしてるよねぇ」
食事が終わって、まだ机をくっ付けた状態でそう言って来たのはテルルだった。
まあ事情を知らないのだから仕方ないが、俺は自分の目の色を見たことがない。
だが、聞いたことはあったから適当に話を合わせることに。
「あんまり言われないなそんなこと」
「いやいや、とってもキレイだよ。テルルうらやましい」
「テルルも綺麗だけど…」
色は白黒灰色しか見えていないが、俺は精一杯笑みを作ってそう言ってみたが、笑みにほとんど作為がいらなかった。
例え色がわからなくても、本当にテルルの瞳がキレイに見えたから。
「えへへ、そんなあ、照れちゃうねぇ」
テルルはすごく嬉しそうに笑うと、照れ隠しなのかケープの裾を握ってもじもじといじりはじめた。
「テルルばっかずるいっ」
「いいなーネオンはモテモテで」
ラドンが正面から頬杖をつきながら、女の子みたいな笑顔で言いながらため息をついた。
モテモテなんて言われたのは初めてだったから、少し恥ずかしかったけれども、それを外に出すことはしなかった。
こんな会話…病院じゃあり得なかった…。
なんだろう、この感覚…少し懐かしいような、そんな気分…。
もしかしたら記憶を失う以前の感情が、今こうして空っぽの自分に注ぎ込まれているのかもしれない。
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