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不覚にもときめいた俺は、ロリコンの気があるのかもと心配になった。
甘えん坊のローレンはちょっと怖いのか俺の隣の席から身を乗り出して裾を引っ張ってくる。
うん…可愛い…。
いよいよ景気のいいエンジン音と共にトレーラーは走り出す。
少ない記憶だったが、俺の人生の全てを過ごしたこの街ともとうとうお別れ。
今思えば、そんなに悪くない1年と半分だったように思えてきた。
恐らく今が感傷に浸る割合でもないからだろう。
今まであったことを思い返すように窓から後ろを見る。
そこには笑顔で手を振り見送りをするスズの姿があった。
「おい、見ろよ」
俺が指差してそう言うと、みんな立ち上がって後ろの窓にへばりついた。
「スズだ!」
「バイバ~イ!」
「また今度~!」
「……………また」
それぞれ声を上げてお別れの言葉を叫ぶが、聞こえているかは定かではない。
だが一生懸命になって手を振りながら叫ぶコイツらを見ていたら、自分も別れを伝えたくなった。
「……………じゃあな」
一言呟いたさよならは、届いてもそうでなくても、言って無駄なものとは思えなかった。
「ロォーーレェーンン!!!」
俺たちのトレーラーまで十分に届くほどの叫び声が、見送るスズの後ろ側から聞こえた。
顔を見合わせてから目を凝らして良く確認する。
巨大な着ぐるみネコさんが必死の形相でこちらに向かって走って来るのがわかった。
「ロォーーーレェンン!!」
再び声が聞こえたから、俺はローレンの顔を見ながらちょっと苦笑い。
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