色の無い世界

4/66
前へ
/1382ページ
次へ
ロストアース。 旧呼アース。 大昔にこの宇宙で一、二を争うほどに栄えたこの星は、一時期機械技術で恐ろしいほどの成長を遂げた。 しかし、最も栄えたその時代に彗星が落ちてきたのは定めなのかもしれない。 『さっさと局長室に来い』 突如現れた彗星『アレスト』。 アースが対処する間もなく衝突。 彗星に付着していたアースの4分の1もの量の氷が溶け、この星の海水を一気に上昇させた。 津波の発生による被害、各地の水没の被害は何万人もの命を奪う。 人類史上最大の危機だ。 「うっせぇな、今向かってるよ」 標高の高い国以外にも生き残った国々があった。 機械技術の使用により陸地を空に浮かべた国々だ。 飛行技術の発達が役に立ったのは言うまでもないが、その半面経済力の乏しい国では、空に浮かべるほどの実力がなかった。 「今度は何やらかしたんだい、また脱獄未遂かな?」 そのため地にすがり付く国と、空に居座る国との2つが出来上がった。 地の国を『トルマリン』と呼び、空の国を『バード』と呼ぶようになったのはつい最近だ。 「何もしてねぇよ」 しかし人間とは醜い。 その数少ない陸地を巡って、戦争を繰り返しながら今日までの歴史を重ねて来たのだ。 だが、問題はそれだけではなかった。 近年問題になっているのは、魔獣と呼ばれるモンスター。 アレストに含まれていた放射性物質によりこの星の生態系を脅かし、それが数々の凶暴な動物を産み出していった。 今では、当時見かけた生き物は人間以外に珍しい、ほとんどの動物が突然変異を起こして、形を変えてしまった。 彗星の衝突、海水の上昇、各地での繰り広げられる戦争、魔獣の出没。 これらは、栄えていた時代のアースの人口を半分近く削った。 かつてアースと呼ばれていたこの星も、誰の皮肉から始まったのか、いつしかロストアースと呼ばれるようになった。    
/1382ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15671人が本棚に入れています
本棚に追加