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俺を担当する局長は、冷静沈着でクールな若い男、病院でも有名な色男だ。
そんな彼が珍しく笑顔を見せて、いやアレは笑っていると言うよりはニヤついていると言う方が的確だな。
ノックの後に部屋に入るとそんな顔をした。
手近なソファーに腰かけ、猫背な俺は前屈みになりながら座り、局長に目を合わせる。
「どうした?いきなり呼びつけて」
特に敬語を使う事もせずに単刀直入に本題に入る。
もちろんただこの不気味な笑いが気に入らなかっただけだが、敬語を使わないのはいつものことだった。
記憶を失う前はわからないが俺は基本ドライな性格だと自負している。
俺の問いかけに局長は鼻で笑うと、座っていた椅子を引き、デスクから何やら書類のような物を取り出した。
これが新しい検査の予定とかだったりしたら、俺はすぐにこの部屋から出てベッドに逃げ込むところだった。
だが局長がガラステーブルに置いた1枚の紙には、想像もしない言葉が書いてあった。
『入学通知』
その用紙には大きな字でそう書かれてる。
下には署名欄や印鑑のマークなどが書き綴ってあった。
『エーテル学園入学手続き書』
そう書かれた1枚の紙とにらめっこした後に、俺は局長に目をやった。
突然こんな話を持ち掛けられても……というのは語弊があるか、局長はまだひと言もしゃべっていない。
こんな紙を突き出されても困る。
理解するのに時間がかかり、展開に追い付けないまま口を開いた。
「言いたいことがいっぱいある」
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