色の無い世界

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「ああ、言わないでくれて結構。この際だからはっきり言おう、お前には書記の学校に入学してもらうことになった」 局長は悪ぶれた様子も見せずサラっと言い放ったから、俺は呆れてため息を吐き出した。 「何でいきなり……」 「お、否定はしないんだな。お前のことだ、すぐに“イヤだ”なんて言うと思ってたんだが?」 正直学校と言う物に少なからず興味があることは、局長にも見抜かれるほどだ。 同年代の男女が同じ校舎、同じ教室で身を寄せ合って、授業をしたり遊んだりする。 とても楽しそうな場所。 お昼休みには机をくっ付けてお弁当を食べたり、食堂でおしゃべりをしながら楽しく昼食を取る。 そんなイメージがあるのはテレビの見すぎだとか言われるかもしれないが、何しろこの病院から出たことがないのだ、テレビしか情報源がない。 そもそも記憶を失う前、俺は学校に行って当たり前のようなその生活を送っていたのだろうか。 ちっぽけなことで笑ったり、泣いたり、喜んだりして、そんな楽しい人生を歩んでいたのだろうか。 知りたくてたまらない。 「お前と同じ年の少年少女達はみんな学校生活を送っているだろ?」 「まあ」 「お前の記憶を取り戻すにはそれ相応の環境で生活させることが最善の策だと考えたわけだ」 「…………」 「どうだ?行くか行かないかはお前の自由だが」 局長は自慢気に自分の定理を述べ、偉そうに腕を組んでこちらを見下ろした。 俺は黙ってテーブルに置かれる白黒の用紙に目をやり、そこに書かれる内容を読み始める。 「…………」 だが、初めから答えは決まっている。 この病院の生活には不満と窮屈さを感じていたから、拒む理由などない。 立ち上がって局長を睨み付けんばかりに見ると、用紙を引っ付かんで押し付けた。 「行く」 すると局長は俺がそう言うとあらかじめ知っていたかのように笑って1つ手を叩く。  
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