色の無い世界

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だんだん楽しくなって来たと感じた頃には夕方近くになって、名前を考えついた時には辺りは大分暗くなっていた。 「決まったみたいだな」 「ああ」 疲れ切ったため息を付くと、辞書やそれらの本を閉じて本棚に戻した。 また今度あんな本を読んで見たい。 そう思えるのはもしかしたら久しぶりに体感する喜びや快楽なのかもしれない。 書類にたった今思い付いた名前を書き、しゃべらずにじっと待っていた局長に差し出す。 すると局長はすぐさまその名前を見て、何かに悶絶するように顔を隠すとプルプル肩を震わせ始めた。 「……笑うなよ、俺だって一生懸命考えて付けた名前なんだから」 「いや、すまんな、つい」 さすがに我慢出来なくなった俺はソファーから立ち上がり、その傲慢な鼻に1発拳を喰らわせてやろうとしたが、あっさり避けられた。 それから憎たらしい笑い顔のままこちらを見上げる。 「いや、悪くない名前だな」 「悪くない名前なら笑うなよ」 「まあそう怒るな」 それから局長は書類をデスクに置いて、ふぅっと息をついた。 なんだか急に目前のクールガイが、珍しく大人に見えた。 不思議に思ったけれど、次の瞬間にはいつものムカつく表情だから特に気にもしない。 学園の説明はざっくりとしたものだったが、初等部から高等部まである事や、俺が寮で生活しなければならない事などが知らされる。 また、余談だが俺の学年は女子が極端に多いらしい。 さらに編入するクラスには男子は俺を含め2人しかいないとか。 まあ、色々あったが入学が決まったのだ。 こうして、俺改め、『ネオン』はエーテル学園に編入することになった。  
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