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「お兄ちゃん、起きてください。お兄ちゃんっ」
ベッドの上で小さな鼾をかいているその人の両肩を揺さぶって、私は何度も声をかけます。しかし、当の本人であるその人……お兄ちゃんはと言えば少しの身動ぎを見せただけで、すぐにまた眠りの世界へと帰ってしまいました。
今日も今日とて、私のお兄ちゃんはお寝坊さんです。私は、お兄ちゃんのそんなところも可愛らしいと思っているけれど、このまま寝かせておいてあげる訳にもいきません。
そう。私はこの後もう一人の家族を起こさなくてはならないのだから、お兄ちゃんの寝顔に見とれている時間なんてないのです。緩んだ口元が特に可愛いだなんて思っている場合ではないのです。
意を決して、私は数歩後ろに下がります。やっぱり、寝坊助のお兄ちゃんを起こすにはアレしかないみたいです。
「お兄ちゃん、ごめんなさい」
未だ夢の世界に行ったままのお兄ちゃんにぺこりと頭を下げると、私はそこから飛躍します。
着地点は……お兄ちゃんのお腹の上、です。
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