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「千尋のあさごはぁぁぁぁぁぁんっ!!」
家中に響き渡るような叫び声に、耳がキーンと痛みます。既に食卓につこうとしていたお兄ちゃん向かって突進していく少女を見つめながら、私は苦笑しました。
それはいつもの光景。我が家における、毎朝の恒例行事のようなものです。
「っと、コラちぃ!お前またかよっ」
「だってだって、夏生にーは千尋の分の朝ご飯食べちゃうんでしょ!?」
「いくら俺が和食派だからってそこまでしねぇよ…!つーか、ただでさえ小春と違ってデカい図体してんだから毎日毎日タックルしてくんな」
「タックルじゃないもん!抱き付こうとしたんだもんっ」
賑やかな二人の様子に、自然と笑みがこぼれます。
彼女は相原千尋ちゃん。私とお兄ちゃんの幼なじみで、今は……少し事情があって私達と一緒に暮らしています。
長身で大人っぽい美人さんで、それからとってもスタイルが良くて。それなのに中身はまるで小さな女の子みたいな、そんな可愛い子です。
「だって、小春ちゃんが早く起きないと夏生にーが千尋の分の朝ご飯も食べちゃうよって……」
「それはそうでも言わないとお前が起きて来ないからだろうが。よくも毎日同じ手に引っ掛かるよな、ったく」
夏生お兄ちゃんと千尋ちゃん。
この二人が私、露木小春の大切な家族です。
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