バレンタインチョコ

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何度目かの失敗にもめげず、母は俺を産んだ。 俺は母にとって最高の出来だったらしく、誇らしげに俺を着飾らせ、箱入り息子に育てた。 だから、俺の事を嫌っているヤツは少なくない。 特に、粗末な服や笑えないギャグの書かれたのを好んで着るようなザコ達は、母が俺だけ甘やかして育てたのが面白く無いらしい。 あの決戦の日…いつもに増して気合いの入った母と、最後の仕上げも完璧な俺と、さして見向きもされないザコと… だが…俺は…その瞬間目を疑った。 その男は…この俺を…ちょっと見ただけで、無視しやがった!! 有り得ない!この俺が!!他のザコどもと同レベル!!! こんな事では終われない!! 授業中、昼休み、放課後、時間や手段を問わず、その男にアピールし続けた。 …さすが、俺! 男は俺の体に触れてきた。 着飾った鎧をほどき、服を激しく引き裂き、その指で俺を摘み、その唇で俺をくわえ、その歯で噛み、その舌で俺を味わう。 その男の熱で、俺の体が溶ろけ、ひとつに交わる。 だが、男は俺を捨てた! 楽しむだけ楽しんで、味わうだけ味わって、捨てた理由は『しつこいし、甘すぎる』…… もう…他なんて考えられないほど…俺の全てだったのに… 男が付けた歯形が体から消えない。 もう、どうでもよかった…ただ…熱く、溶ろける感触を、もう一度感じたかった… 通りがかった男が、俺を拾い、自分のペットに与える。 母が飾ってくれた服も、泥と体液にまみれ、激しく咬まれ、無器用な手で転がされ、ざらついた舌で体中を舐め輪わされ…そいつが飽きれば次…次のヤツが飽きれば、又次のヤツ……だが、見ず知らずの相手でも…体は、その熱で溶かされ、混ざりあう。 気が付けば…ザコと見下していた奴らは、そのご主人様と笑いあい、ひとつになって行く。 初めて…羨ましいと感じる…そして…それが最後の感情……… 【終】
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