糸の章

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だから側にいたかった あの人の 優しさに触れていたかった 「近付きすぎて情が湧いたんだね だからなかなか殺せなくなった」 そう言うとじっと私の目を見た。 何かを見透かそうとするように。 私は目をそらさなかった。 ―――――――――――情? 確かにこれも 1つの情かもしれない 断ち切れなかったあの人への 気持ち 今もなお私の中にあるもの ノックの音が鳴り まるで夢から覚めたように 扉に目をやった。 書記官になりすましていた刑事が 何やら耳打ちをしている。 さっきまで 質問をしていた刑事の視線が 私に移った。 書記官の刑事は耳打ちを終えると 紙を渡し部屋を出て行った。
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