本当の仲間

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  「それにしても…  池田屋は随分  酷かったらしいの…」 「俺ん友も生きてるか  死んでるかすら分からん」 「吉田殿も宮部殿も  犬に殺られてしもうて…  皆、亡くすには  惜しい人じゃった…」 別人ではないのかと疑うほど 男たちの声に覇気がない この男たちの言う 〝犬〟とは 新撰組の事であろう 要はちらりと 斉藤を窺い見るが 当の本人は全く気にせず 相変わらずの無表情で じっと、男たちの話に 耳を澄ましている その時、しんみりとした 空気を若い男が ため息で吹き飛ばした 「……何じゃ三芳。  何か言いたいことが  あるがか」 早速一人の男が 食って掛かる 三芳と呼ばれた男は 生白い顔を湯気から上げた 「全く…飲み過ぎですよ。  酔っ払いの話は  起伏が激しくて素面では  ついていけませんね」 「煩いっ!!  お前は悔しうないがか!?  あの御方たちは皆  我らの標じゃった!!」 三芳、という男の言葉に 今にも掴みかからん勢いで 男が叫んだ しかし三芳は 怒鳴る男を睨むでもなく ゆっくりとした動作で 湯飲みを持ち上げる  
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