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中学2年の夏、僕は両親を失った。
お父さんは消防士でマンション火災の際、逃げ遅れた子供を助けた時に亡くなった。
お母さんは保育士で車に引かれそうになった子供を助け、代わりに引かれてしまった。
2人は同じ年に亡くなった。
仲の良い夫婦として近所でも評判だったのを今でも覚えている。
目が覚めた僕は、夢を見ていたことに気づく。
あのとき以来初めて両親の夢を見た。
今日で最後の我が家での朝。
少しだけ両親との思い出に浸った。
朝の支度をして後は家を出るだけとなった頃、いつものようにやつが来た。
『翔、むかえにきたぜ。』
親友の高橋 和貴(たかはしかずたか)が玄関に来て僕の事を呼んでいる。
『和貴、今出るから。』
僕は靴を履きながら和貴にそう言って玄関の扉に手を掛ける。
『行ってきます。』
お母さんの『いってらっしゃい。』という声が聞こえたような気がした。
和貴と2人でいつもの道を登校するのも今日が最後となった。
いつものようにたわいのない会話をしながら歩くこと20分、学校の正門についた。
今日だけはいつもない受付に名前を言わなければならない。
今日は卒業式だから。
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