揚羽の後宮

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鏡でみられているとは知らず、后候補たちは思い思いに、立食形式のパーティーを楽しんでいた。あきらかに派閥があった。 今回は侍女をつれてきてもよいとしていて、威張り散らす小国の姫君やら貴族やらをみて揚羽の眉間にしわがよった。 きらびやかな立食形式のパーティーに見飽きることなく揚羽はじっくり観察していた。すると、目をしばつかせる。 「北辰、あそこにいるのは…」 扇を指した先を北辰たちがみると、その先にはオロオロしている女性がいた。 「あの方は…」 「普羅の姫か??」 揚羽の答えに驚きながら御意と礼する。 揚羽は扇を指で遊ばせながら、北辰に告げた。 「正室候補で呼んだのか?」 「はい、ですが彼女には期待した器量はなく…」 北辰の答えに、揚羽は首を傾げる。 「…他の姫たちの風当たりが強すぎるのだろう。」 揚羽が目を細めると尾塩は頷く。 「聞いてくだせぇ、揚羽。姫君たちは、瑠璃嬢に毒をもったり、蛇を部屋に入れたりとそりゃもう。さらには面と向かっての言葉の…」 「尾塩、控えよ。揚羽様にはかようのようなことは告げずともよい。後宮内権力争いも征せられない正妃はいらないのだ。」 北辰がぴしゃりというと、揚羽は笑う。 「北辰、いいんだ。尾塩、ありがとう。…我が後宮において、そのような行為をする妃自体、いらないんだ。」 ぞっとするほど冷たい笑みだったが、突然ばっと扇をひろげた。 「始まったぞ、いざこざが。」 その笑みには審査する気が伺えた。 尾塩は心の中で祈っていた、瑠璃嬢の無事を。
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