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揚羽の後宮で一人、后候補だった姫の遺体が発見された。
裏庭のど真ん中で。
さすがに後宮中が集まった。揚羽は再び尾塩の部下として姿をみせている。
織は遠巻きにし、あまつさえ陰口を叩く姫たちをよそに、目を落とした。
遺体は隣国の姫君だった。召集に応じたはずなのにいっこうに現れないため、放置していたのだ。
しかし遺体となって現れた。北辰は眉をひそませ、揚羽のしまったという顔を目撃し、申し訳なさに悲しくなった。
織は他の姫たちが袖で口を隠し、汚いものをみるような目で遺体をみているのに、こみ上げてくる怒りをなんとか抑えこんだ。カタカタとふるえる織を、瑠璃がたまたま気になって声をかけた。
「大丈夫ですか?」
瑠璃の声で我にかえり、にぎった手をゆるめた。伸ばしていた爪は手のひらに食い込んで、衣には血が付いていた。
瑠璃は驚いて、しかしすぐに自室に連れ帰って、侍女に手当させた。
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