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もう冬の寒さが厳しくなる季節、翔太郎は鏡を見て、自分の中で一番、ハットが似合う位置を確かめていた。
こんな事を出来るのは、《あの人》がいない時しか出来ない。
翔太郎は、自分の世界に入り込んでいると首根っこを捕まれた。
「…何をしている?」
その怒りでは無く、冷めたような声で翔太郎は我に返る。
捕まれてたのが解放される翔太郎は恐る恐る後ろを振り返った。
「…おやっさん。」
「半人前に帽子は、まだ早い。そう言わなかったか、翔太郎?」
《おやっさん》である《鳴海荘吉》が、翔太郎が被っていた白のハットを帽子掛けに向かって投げる。
綺麗に掛かった帽子に目を奪われた翔太郎だったが、荘吉が、第二投した自分が被ってた黒のハットを投げた瞬間に、荘吉を見た。
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