妖狐と護り神。

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……ガタン…ガタン……。 「一人で来なさいってどういうことだろう……?」 私は窓越しに山や田んぼばかりの景色に向かって電車に揺られながら、一人呟く…。 元々田舎へ向かう電車のだから、大して人も乗って居ないし、いたとしても老人ばかり。 自分が呟いても、車両の中を虚しく響くだけだった……。 そんな私の名前は雛(ひな)。来年から高校生となる…けどどこに進学するかは未定…。 そんな私が今回電車に乗っているのは朝、電話がかかってきて、祖母に一方的に呼ばれて何も聞けずに今にいたるのである…。 「「次は華凜(かりん)、華凜に……」」 「あっ……私が降りる駅だっ!」 そのまま外の景色を見ていると、電車内ににアナウンスが鳴り、私は降りる支度を始める。 華凜とは、祖母の家のある地域の名前だ。名前の由来は、特産物が花梨(かりん)なだけだったと聞いたことがある。 数分もすると、プシューと音を立てて出入りする扉が開き、私はそこから下車した……。 「よっと……おばあちゃんの家は……あっちか」 私のおばあちゃんは神社の神主さん。この田舎では、高い所にある神社はそっと回りを見渡せば直ぐに見つかるものだ。 私は神社のある方向へと、歩みを始めた。 ……これからある不幸と不安を知らされることを知らずに……。
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