妖狐と護り神。

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「雛……雛っ!」 (誰かが呼んでる……?) 「ん……」 ゆっくりと目を開くと、そこには…… 「わ…私がもう一人……?」 そう、私の前にはもう一人の『私』がいた。ただ、服装だけは着物なだけでそれ以外は私と同じなのだ。 「カカカ、不思議か?雛?」 「あっ!その笑い方はあの不思議な狐なのねっ!?」 特徴的な笑い方で気づいたのか、私は声をかけると、もう一人の『私』の頭からピョコッと狐の耳が、腰の辺りからはフサフサの九本の尻尾が生えてくる。 「カカカ、雛にしてみればなかなか鋭いの♪ 変化(へんげ)して化けてるだけじゃ♪いかにも、私は雛のいう狐……正確に言えば、妖狐じゃ」 私の驚く様子を眺めている狐は実に楽しそうに見える。 「で…何の用なの…?私をおばあちゃんの家にわざわざ呼んだのは…妖狐さんなんでしょ……?」 「うむ…雛を呼んだのは私じゃの。私はここから出られないから、雛の祖母に頼んだのだがの」 妖狐は何も隠そうとはせず、カカカと笑っている。 その様子を見て、私は何故かため息が出てしまう……。すると、妖狐は突然真剣な顔になり、話を進めた……。 「まぁ…用件はというとな…簡潔に言うと、雛が妖怪に命を狙われているらしいのでな、護り神として護ってやろうと思ったのだ」 「え…えぇ……!?」 うん、私は当然の反応をしたと思う。なのに…妖狐さんはそんなに焦るなと笑っている……。 (うぅ……私の命に関わることを突然言われて笑えないよ…) 私はまた、ため息が出てしまった……。
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