夜の図書館

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 一方、閲覧室の中では――。  先ほどの少年が、読んでいた図書を本棚へと戻し、帰り支度をしていた。  ドアの向こうで行われている乱闘を知ってか知らずか、ゆったりと荷物をまとめ、まさに教室から出て行こうとするところである。  戸締まりを確かめ、いくつもの机の間を縫うように進む。  明るい閲覧室と暗い廊下を隔てていた扉の前に立ち、躊躇することなくがらりと開けた。  そこには――――。 「おぅユリエル、さっさと帰るぞ」  先ほどの燕尾服の若者が、やはり不機嫌そうな顔で立っていた。 .
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