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 朝の駅というのは大抵、キャパを軽く超えているのではないかと思うほどの人であふれているものである。2009年○月×日月曜日、すなわち今日も例に漏れず前後左右どこを見渡しても人、人、人。  仕事に向かうであろうスーツ姿のサラリーマン。眠そうに目を擦るセーラー服の女の子。ちょこちょこと器用に人の隙間を縫って進む小学生。  俺はというと券売機で切符を買ったのは良いものの人混みに飛び込む気力がなくて立ち尽くしている。本来ならば今日は授業がなく大学に行く必要はないというのに、先輩に呼ばれたというただそれだけの理由で人の波にもみくちゃにされなくてはならないなんて耐えられない。先輩にはなにか理由をつけてもう帰ろうか。切符の払い戻しはしてもらえるんだっけ。なんて買ったばかりの切符を指先で弄っていたらポケットに入れた携帯が震えた。  サブディスプレイには先輩からの着信表示。 「もしもし」 『お前、今どこだ?』 「今、は……駅です」 『そうか、他の連中が遅れてくるらしいからゆっくりでいいぞ』  俺が行くことを前提とした先輩の言い草に曖昧に返事を返す。そのまま切ろうとしたら、ちょっと待てと聞こえて再び携帯を耳に当てる。 『さぼろうなんて思ってないよな?』  楽しそうな先輩の声に俺の心臓がヤバいくらいに飛び跳ねた。  この人はエスパーかと思うほどに人の心理を予測できて、しかもそれがあたる。 「前から思ってましたけど先輩、読心術でも使えるんですか?」 『んなわけねぇだろ。ただの心理学専攻の学生だ』  先輩はケラケラ笑って最後にもう一度、さぼるなよ、と言って電話を切った。  あれだけ釘を刺された以上、行かないわけにはいかない。携帯をしまって切符を握りしめ人混みに飛び込んだ。
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