輝く君

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あぁー…何やってんねん、俺。 部長睨んどったら謙也くん見れへんやん。 しかも嫉妬とか、どんだけガキやねん。 自然とため息がでる。 胸に残るモヤモヤを払いたくて、スタートラインに立つ謙也くんを目で追った。 こっち…振り向かんかな――。 "パチ" 「あ」 ……今、謙也くんと目が合った。 てかホンマに目、合ったんやろか? 見間違いとちゃうよな…? チラリと視線を戻すと謙也くんが笑顔で手を振ってきた。 マジで…? うわっ何で俺ニヤケてんねん… キッショイわ俺。 口元を隠しつつ謙也くんを見る。 ん? 口パクで何か言って――。 『見・て・て・や』 パクパクと俺に解るよう口を動かして、俺が頷くのを見るとニコッと笑った。 俺はまた頷き返す。 そんなん言われなくても見とりますわ、ずっと…。 謙也くんは横に引かれているラインの一歩手前でクラウチングポーズをしてグッと前に重心をかけた。 体育の教師が片手を真上に高く上げて、耳を塞ぐ。 "パンッ" その音が辺りに響き渡った瞬間、スタートラインには謙也くんの姿は無かった。 「浪速のスピードスターは誰も抜けんっちゅー話や!!」 そう言って、後ろで走るクラスメート達との距離をドンドン離す。 『流石、浪速のスピードスターや!!行ったれー!!』 走り終えた奴らや、これから走る奴らが大声で叫ぶ。 いつもなら"ウザいわ"の一言で終わるんやろうけど、今はそんな声すら気にならん程、謙也くんに引き付けられてる。 太陽の光で反射して、キラキラしてるフワフワな金色の髪が綺麗でみとれる。 謙也くんが走った後は、汗が飛びキラキラしとって瞬きすら惜しい。 目が離せんわ……。 "パンッ" いつの間にか一周して走り終わっていた謙也くん。 合図の音でそれに気がついた。 "くるり" そう効果音がつきそうな動きで謙也くんが俺を見た。 『一・位・取っ・た・で!』 人差し指を俺に向けてニッと笑う謙也くん。 "ドクンッ" 胸が鳴ってじわじわと温かい何かが広がってく。 「…ホンマに敵わへんわ」 ほんの小さく、誰も聴きとれないであろう声で俺は呟いた後 『肩で息しとりますよ、せ・ん・ぱ・い』 自分の気持ちを隠すように、そう口パクで言ってやった。
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