走り出すまで後、5秒

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一人立ち尽くして、謙也くんが居るコートを見ているとベンチからまた、うっとい声が響いてきた。 「財前!!ちょっとこっち来いや」 ……っ! 俺はイライラMAXで部長を睨みつける。 部長はその視線を受けて苦笑…余裕な態度が更に俺をイライラさせた。 睨みつけながらベンチ近くまで行く …こいつに謙也くんは渡さへん。 「…なんすか?」 ベンチに座る部長を冷めた目で見下ろす。 今までで一番冷たいんじゃないやろか。 「はぁ…むっちゃ冷たい視線やなぁ」 「元からっスわ」 今この場には俺ら二人しかおらん。 冷たく返事を返すと、また部長は苦笑する。 「何や勘違いしとらんか、財前」 そして口を開いたと思ったら意味わからんことを抜かしよる 「は?何がっスか?」 一体何を言いだすんや、勘違い?何が? 俺の眉間にしわが寄る。 「はぁ…ホンマお前鈍いなぁ」 部長はため息をつきながらやれやれと首を竦めた 「いいか財前、俺は謙也を恋愛対象として見とらん、見たとしても入る隙が少しもあらへんわ」 「……?」 「…どんだけ鈍いねん」 白石部長は立ち上がって俺に目線を合わせてきた。 「お前、暇さえあれば謙也を目で追ってたやろ」 「ッ……!!」 何で…バレとるんや? バレんようにこっそり見とったのに… 「あんな財前、お前のあっつーい視線に気づいとらんのは謙也と金ちゃんだけやで」 ピタッと動けなくなる。 それじゃ他の先輩らにもバレてたん? 俯く俺に部長は待ったをかけた 「ちょい待ちや、財前。話はまだ終わっとらんで――ここからがメインや」 部長は瞳を細めて『ホンマは自分で気づくまでほっとこ思ったんやけどな』と笑った。 「お前だけやないんやで?あっつーい視線を向けてたんは」 「俺だけや…ない?」 「おん、ほら今も…」 コートを指さす部長。 俺はすぐに後ろのコートを見渡した。 そして…―― 「あ…」 おった、今まさに目が合っとる。 「謙、也…くん」 目が合うと思わなかったんか謙也くんは驚いた顔をして動かなくなった。 ドクンドクン―。 心臓が五月蝿いほどに鳴っとる。 ああ、そうやったんか ホンマに…俺らはどんだけ鈍いねん。 自然と口元が綻んだ 『愛してる…』 顔を紅くしてオロオロする愛しい君の元へ、同じ気持ちを伝えに行こう 脚に力を入れて 走り出すまで後、5秒―― 4、3、2、1―― 「謙也くん!大好きや!!」       -END-
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