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『…目覚めよ』 『…目覚めよ』 『…目覚めよ』 「うるさい!うるさいうるさいうるさい!!!」 森の中に少女の声が響いたと同時に髪も瞳も赤い少女が立ち上がる。彼女の名は芽衣。 「貴方ね!アタシをこんな所に連れて来たのは!!」 木の枝の下で上を見上げるとそこにはフード付きのマントを羽織った青年らしき人物が芽衣を見下ろしていた。 顔の半分はフードで隠れ表情は見えなかった。 『やっとお目覚めですか?そう、自分がお連れになったのです』 「貴方、一体何者なの!?」 『自分は自分です。おめでとうございます。貴女はアリスに選ばれました。』 「え?」 (そういえば…さっきもアリスがどうのこうのって…) 『いゃあ、おめでたいおめでたい。アリス、自分はアリスを歓迎しますー』 フードの青年は棒読みのまま話し、芽衣に丁寧にお辞儀をしました。 「アリス…?アタシ貴方の言ってることがわからないわ。」 『わからなくて結構ですーじきにわかりますから』 「それじゃあ納得出来ない!きちんと説明してちょうだい!!」 芽衣は強い口調で言いました。 『アリスはアリスですー。そして、自分は自分です。それ以上でもそれ以下でもない』 「だからアタシはその意味を聞いているのよ!」 『ですから何度も言う通りじきにわかります』 「……。」 このままじゃ、らちがあかない。芽衣はそう判断すると、この質問を止めた。 「それじゃあ別の質問をするわよ?此処は何処なの?貴方はどうしてアタシをこんな所に連れて来たの?」 『此処はどこにでもあってどこにもない場所。そうですねー呼び名が無いと不便ですしー〈不思議の国〉とでも呼びましょうか』 (どこにでもあってどこにも無い?不思議の国?フードの人は抽象的な表情が大層好きな様ね)
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