1番目

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『ここは、貴女が元居た世界とは別の世界。貴女を咎めるものは何一つとしてない。この世界なら、その殺人衝動をムリに抑えなくてもいい。この世界なら、沢山のモノを壊すことが出来る。そして、その罪にとわれることもない。好きなだけ人を斬れる。肉を絶つあの感触。体液の香り、温もり。斬った直後痙攣している臓器の必死さ。徐々に熱を無くしていく身体という入れ物。』 フードの青年の囁きはまるで、悪魔の囁きでした。 芽衣はその場にしゃがみ込みました。見ると、彼女は青ざめた顔でごくりごくりと、何度も唾を飲み込んでいました。 「あぁ、あぁ、喉が、喉が渇いたわ」 『そうですか。なら、ジュースを取ってくればいいじゃないですか。とれたてに人の血は正に別格ですよ。貴女が1番知ってるんじゃないですか?』 「そう、そうよね。誰もアタシを責めないんだものね。誰もアタシを責められないんだものね」 芽衣の様子は、先程とは全くの別人になっていました。 彼女の瞳は狂気に歪んでいました。それは正しく殺人鬼の顔でした。
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