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「何その冷めた反応」
「別に」
そう聞いてみた所で、返ってくるのはやはりこちらを見ようともしない気の無い返事でしかない。
ため息ひとつ。
佳美は閉じたファイルを千秋の元に投げて戻した。
バサリと音を立てるそれに、さすがに千秋も顔を上げ、タイミング良く向かい側の椅子に腰を下ろす佳美と目線が揃う。
その視線を逃さないように身を乗り出した佳美は頬杖を付き、投げ出されたファイルを引き寄せる千秋の手に空いた自分の掌を重ねた。
「ね。千秋もさぁ、他人のモノばっか見てないで、もっと自分を見てくれてる人の事、大事にした方が良いんじゃない?」
「は?」
「ほら。私とか」
わざと身を低くし、上目遣いに言う佳美。
柔らかな温かさを感じる掌を訝しげな表情で払う千秋に対し、それでもめげずに払われた手で自分を指差した彼女はにこりと笑ってみせる。
その笑顔にげんなりとした風に一度ファイルを投げ出した千秋は大きく嘆息し、椅子の背もたれに思い切りもたれかかった。
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