月ノ無イ夜

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一度 掃射が止んだ。 前は依然煙 軍は 銃を向けたまま睨むようにしている。 血と 火薬の匂いに嗅覚は麻痺し 耳元から聞こえる銃声や砲の音に 耳鳴りが酷い。 最前列の数名が 機関銃に弾を入れ直す。 辺りは 静かだった。 ぞくぞくと 妙な感覚すら感じた。 倒した。 違う。 倒せない。 敵は 無限だから 「…来た。」 スコープを覗く。 斜面下の煙の影に 何度も見た茶色い殻が見えた。 一匹が 百足ムカデのように無数の足を揺らす。 それの尻尾が煙を出る頃には 赤くなった斜面は茶色と てらてらひかる粘液で埋もれた。
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