月ノ無イ夜

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カチン..カチン.. 手に持つカービンが 虚しい音を立てる。 最後のマガジンが切れた。 腰に手を回すも もう彼等に抵抗する力は何一つ無いことを思い知らされた。 「総員撤退!! 各班はふもとまで後退して体勢を立て直せ!!! 仕切り直すぞ!!」 その声を聞き 軍服の男達は斜面を自国側へと下りはじめた。 しかし 突然空から響き渡った一つの音に 辺りの叫び声も罵声も 掻き消された。 「隊長!!」 「…そんな…」 空を見ていた。 白く細く伸びる煙が 幾本と空に出来ていた。 その突端に光る輝きの 弾頭は迷い無く山頂の上へと空を貫いた。 刹那 真っ白な風と閃光が 空に放たれる。 そこで 人生を終えた。
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