幼なじみサーガとシュールストレミング

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 どうだサイキッカー。これでも僕が羨ましいか。バーカ、バーカ。  ……いや、そろそろ妄想の産物相手に記憶を語るのも虚しくなってきたな。止めだ止めだ。  しかし。こうして思い返すとやはりとんでもないな傭兵師かのん。こんな風に外面だけ見ると完璧な美少女なのになぁ。残念無念。天は二物を与えないという事か。  時刻は十一時を廻っていた。到着が十二時の予定だから後、小一時間程は暇を持て余す事になる。  バスは高速道路を抜けて一般道へと入っていった。  暇だ。暇である。あまりにもする事が無いので姉貴にメールでも打とうかと思った所で携帯電話を置いてきた事に気づく。  携帯電話の持ち込みは認めない。  セミナーの参加規約にでかでかと明記されていたのを思い出す。  セミナー。そう、セミナー。  これから僕とかのんの向かう先のホテルは有名な観光地に建てられた訳でも温泉街でも無い。売りは地元では名の知れた湖畔の景色と郷土料理という旨みの少な過ぎる宿だ。  仮に僕らが旅行へ行くとしても間違い無く候補にも挙がらない様な宿泊施設へ赴く目的は当然、レジャー観光等では無い。  僕達の目的は。  そこで開かれる三泊四日のイベントに参加する事である。  『ユニバーサルライフデザイン』社主催自己啓発セミナー、通称ユニバースセミナー。  僕とかのんがこれからお世話になる宴の名だ。  キャッチコピーは『本当の自分を解き放て!仲間と見つける世界の真理!三泊四日の自己革命!』  うん、まぁ。  胡散臭い。  シュールストレミング並みに臭い。  胡散臭さの缶詰めである。  
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