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3年前の春
高校入学を目前に控えた
ある日のこと
神様は俺を見放した。
「っ、父さん!母さん!」
連絡を受け、駆け込んだ病院
待っていたのは
すでに息のない両親だった。
「嘘だろ…。
おいっ!目ぇ覚ませよっ!!」
"不慮の事故"
簡単な言葉で片付けられた両親の死
どれだけ泣き叫んでも、
悪夢は覚めなかった。
「やだよ…っ
俺を置いてかないでくれよぉっ!!」
身寄りのない俺は、
独りぼっち。
新生活のスタートは、
孤独な人生の始まりでもあった。
* * * *
「君が紅くん?」
両親の死から立ち直れず、ふさぎ込んだ毎日を過ごす俺の前に
あなたは突然現れた。
「だ、誰…?」
「ふふっ。はじめまして
俺は蒼。」
「あ、はじめまして…
紅です…。」
柔らかに微笑むあなたは、
堅い殻で覆われていたはずの俺の心に
優しく、そっと、
入り込んできた。
「今日からお隣さんです。
よろしくなっ!」
「えっ……あ、はい。
よろしく…。」
これが
俺達の出逢い。
俺達の始まり。
あの時、
神様は俺を
見放さなかったのかもしれない。
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