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「寒いねー」
「ね」
「こんな朝早くからどうしたの?」
「こーくん、待ってた」
「え、俺?」
問い掛けに小さく頷いて。
「今日は勝負の日だから」
目の前に立った彼は、
そのまま俺をギュッと抱きしめた。
「ちゃんと頑張れるように」
回された手が、
俺の背中を撫でる。
彼がこんなことをするのは
決まっていつも、俺を励ます時。
不思議なことに、力が湧いて。
おかげでいつも、
全力を出し切れる。
「ありがとう、蒼くん」
「どーいたしまして」
彼がそっと離れる。
名残惜しいけど…
もう行かないと。
「じゃ、行ってくるね」
「おうっ!
がんばれよ~!」
「うん。行ってきます!」
彼に背中を向けて歩き出す。
曲がり角で振り返ると、
彼はまだそこに居て。
「がんばれー!」
こちらに向かって、
ブンブン手を振っていた。
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