序章

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 何日が過ぎただろうか、持ってきた食料は底をついたというのに嵐はやむ気配を見せない。マストも舵も完全に壊れた。進路も速度も滅茶苦茶になってしまった。  …という事だ、つまり俺は今、嵐の大西洋に一人取り残されたってこと、もう運を天に任せるしか無いのか…  その時突然船底から鈍い音が聞こえてきた。まさか、浸水したのか!?不安が脳をよぎる。直ぐに階段を駆け下りると床一面水浸しとなっていた。もう俺の人生はお終いなのだろうか。こんなことなら親父の言うことに従えば良かった…  …待てよ確か甲板に小型のボートがあったはず、あれに乗れば助かるかもしれない!僅かな希望を賭けて甲板に飛び出たものの、船は横に傾きだした、ボートはどこだ!?ふと海面に目をやるとボートが浮かんでいるではないか。  このままでは船は確実に沈む。そう悟った俺は海面のボートに飛びかかった。沈みゆく木造船を背中に泳ぐ泳ぐ。そしてついにボートに手がかかった!最後の力を振り絞って俺はボートに飛び乗った。そして全身に衝撃を感じながら俺の意識は薄れていった。
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