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暖かな日差しの下のドライブ。助手席に彼女を乗せて、俺は上機嫌でハンドルを握っている。俺の話に彼女は笑い、どこまでも続くと思われる一時に俺はこれ以上ない喜びを感じていた。
前を走る車のストップランプに、俺はゆっくりとブレーキペダルを踏み込んだ…が、ブレーキペダルは何の抵抗もせずに沈んだ。
(ブレーキが利かない?!)
俺の顔から笑顔が消え、冷や汗が吹き出す。
目の前には車が迫っていた。
助手席で、スピードを落とす事なく前車に近づくのに気付いた彼女が、叫び声をあげたが俺の耳には入らなかった。
(ぶつかるっ!)
「うぁっ!」
俺はそう叫ぶと目を覚ました。
身体が汗でぐっしょりと濡れている。
(最近似たような夢が多いなぁ。)
俺はそう思った。
目覚めると夢の中身はすぐに記憶から消えるが、その思いに間違いはないような気がした。
(俺には彼女なんて居ないのに… 彼女が出来る、って予知夢か?)
そう思うには相当の努力が必要だった。
(忘れよう。)
俺はそう思うと布団を抜け出し、熱いシャワーを浴びた。
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