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現場に着いた俺は時計を見た。
(一時間ちょっと眠れるな。)
本当なら布団でもう少し眠っていたいところだが、朝の10分15分で交通量が二倍三倍に変わるので、そうも言っていられないのが現状だった。
俺はエンジンを切ると目を閉じた。習慣とは大した物で、俺はすぐに眠りに落ちた。
俺は夜の街を、乗客を求めて流していた。
今日の勤務は朝の五時まで。そろそろお化け(長距離利用の客)が捕まる時間帯だ。
駅に張りつくのが嫌いな俺は、自分の経験と感を頼りに繁華街の外れを流した。
ポツポツ
窓に雨があたり始めた。
(いいタイミングで降ってきた。)
俺は車の速度を落とすと、歩道に目を凝らした。
強くなりだした雨に、車道を振り返った女性と目が合った。
俺が車を寄せると女性客が車に乗り込んだ。
「○○○○まで。」
(やった。お化けだ。)
女性客は行き先を告げると大きなあくびをした。車内にアルコールの匂いが漂った。
やがて女性客は寝息をたて始めた。彼女の香水の匂いとアルコールの匂いに、俺は細く窓を開けた。
生暖かい風に俺は睡魔を覚えて、慌てて窓を閉めた。
(この客で今日は最後にして少し眠ろう。)
俺はアクセルを踏んだ。
(睡魔に負ける前にさっさと終わらせよう。)
そんな俺の気持ちを邪魔するかの様に、先の信号が赤に変わり、俺はブレーキに足をかけた。
(?!)
ブレーキペダルは虚しく空を切った。
俺は慌ててギアを落としながら、減速したが、交差点に車は吸い込まれた。
俺は激しくクラクションを鳴らす事しか出来なかった。
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